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    注目すべき感染症
  • RSウイルス感染症
  •  RSウイルス感染症(respiratory syncytial virus infection)は、病原体であるRSウイルスが伝播することによって発生する呼吸器感染症である。年齢を問わず、生涯にわたり顕性感染を繰り返し、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の児がRSウイルスの初感染を受けるとされている。乳幼児期においては非常に重要な疾患であり、特に生後数週間~数カ月間の時期においては母体からの移行抗体が存在するにもかかわらず、下気道の炎症を中心とした重篤な症状を引き起こす。

     潜伏期間は2~8日、典型的には4~6日とされている。発熱、鼻汁などの上気道炎症状が数日間続き、その後下気道症状が出現してくる。咳嗽、鼻汁などの上気道症状が2~3日続いた後、感染が下気道、とくに細気管支に及んだ場合には特徴的な病型である細気管支炎となる。細気管支炎例では、炎症性浮腫と分泌物、脱落上皮により細気管支が狭くなるに従って、呼気性喘鳴、多呼吸、陥没呼吸などを呈するようになる。喀痰の貯留により無気肺を起こすことも珍しくない。心肺に基礎疾患を有する児においては、しばしば遷延化、重症化する。発熱は初期症状として普通に見られるが、呼吸状態の悪化により入院が必要となった際には体温は38℃以下になるか、あるいは平熱となっている場合が多い。RSウイルス感染症は、乳幼児の肺炎の原因の約50%、細気管支炎の50~90%を占めるとの報告もある。また、低出生体重児や、心肺系に基礎疾患があったり、免疫不全が存在する場合には重症化のリスクは高く、臨床上、公衆衛生上のインパクトは大きい。重篤な合併症として注意すべきものには無呼吸、ADH分泌異常症候群、急性脳症等がある(IASR 2008年10月号参照)。

     RSウイルスの主な感染経路は飛沫感染と接触感染であるが、感染力が強く、また生涯にわたって何度も顕性感染を繰り返すといわれている。年長者の再感染例等では典型的な症状を呈さずにRSウイルス感染と気付かれない軽症例も多数存在することから、家族間の感染や乳幼児の集団生活施設等での流行を効果的に抑制することは困難である場合が多い。

     RSウイルス感染症の発生動向については、感染症法改正(2003年11月5日施行)により対象疾患となり、全国約3,000の小児科定点医療機関から毎週報告がなされている。診断は臨床症状のみでは不可能であることから、届出基準としてウイルスの分離・同定、迅速診断キットによる抗原検出、血清抗体検出(中和反応または補体結合反応)による病原検査が必須とされている。臨床現場で最も簡便な迅速診断キット検査については、医療保険適用として入院例のみが対象であったが、2011年10月より従来の入院例に加えて乳児およびパリビズマブ製剤※1 の適応となる患者※2 に対しても適用されることとなり( 厚生労働省ホームページ参照)、現在は外来診療の場においても活用されていることと推察される。

     RSウイルス感染症の小児科定点医療機関からの報告数は、例年冬期にピークが見られ、夏期は報告数が少ない状態が継続していたが、2011年、2012年と2年連続して7月頃から増加傾向がみられている。2012年の報告数は第28週以降9週連続して増加が続いており、特に第36週の報告数は2,785例と2週連続して急激な増加(第34週1,164例、第35週1,998例)がみられている。都道府県別の報告数をみると、福岡県(479)、東京都(317)、宮崎県(285)、大阪府(174)、鹿児島県(109)、山口県(104)、広島県(103)、埼玉県(100)の順となっている。39都府県で前週の報告数よりも増加が認められており、宮崎県、大阪府、東京都で大きな増加がみられている。

     2012年第1~36週の累積報告数(36,589)の年齢群別割合をみると、0歳44.6%(0~5カ月19.8%、6~11カ月24.8%)、1歳33.1%、2歳12.2%、3歳5.8%、4歳2.4%の順であり、0歳の報告割合が最多を占め、次いで1歳、2歳と年齢順であり、1歳以下で全報告数の約70%以上を、3歳以下で全報告数の90%以上を占めているのは、2004年以降変わりはない。一方、今夏の報告数の増加が始まった第28週以降の9週間では、累積報告数10,206例中0歳からの報告割合が38.1%(0~5カ月15.4%、6~11カ月22.7%)、1歳からの報告割合が39.4%、2歳13.7%であり、1歳の報告が最多を占めている。

     感染症発生動向調査からは、RSウイルス感染症の流行の立ち上がりが近年早まってきているものと推察される。2012年の報告数は、第31週以降はこれまでで最も立ち上がりが早かった2011年の報告数をも上回っており、特に第35週以降は急激な増加を示している。RSウイルス感染症は、その重篤性や合併症から特に乳幼児において臨床的および公衆衛生的にインパクトの大きな感染症であり、今後の同疾患の報告数の推移についてはより一層の注意が必要である。

     ※1. パリビズマブ製剤:RSウイルスの感染予防
       感染発症後の重症化予防に用いられる
         遺伝子組み換え抗RSウイルス抗体

     ※2. パリビズマブ製剤の適応となる患者↓

  • 在胎期間28週以下の早産で、12カ月齢以下の新生児及び乳児
  • 在胎期間29~35週の早産で、6カ月齢以下の新生児及び乳児
  • 過去6カ月以内に気管支肺異形成症の治療を受けた
     24カ月齢以下の新生児乳児及び幼児
  • 24カ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患の
     新生児乳児及び幼児


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